🐱猫を迎える前に知っておきたい「お金の話」

やわらかな毛並みと温もり、気まぐれな性格も含めて愛おしい存在。
そんな優しいしあわせをもたらしてくれる、猫との暮らし。

けれども、そのしあわせな時間を長く健やかに続けていくためには、食事やトイレ用品といった日々のケアはもちろん、健康診断や予防接種、万が一の病気やケガに備える医療費など、経済的な準備も欠かせません。

猫の寿命はここ数十年で大きく延び、長寿化が進んでいます。
例えば、2000年当時の平均寿命は7.9歳でしたが、2020年には15.4歳と約2倍に伸びました。
さらに、最新の一般社団法人ペットフード協会の調査(2024年)では、平均寿命は15.9歳、室内飼いの猫に限れば16.3歳とされており、医療やフードの進歩、飼育環境の改善によって、猫の寿命はますます長くなっています。

その長い年月を安心して共に暮らすためには、飼い主が「どのくらいの費用が必要になるのか」をあらかじめ見通し、計画的に準備しておくことが大切です。
食事や医療費、シニア期のケアなど、ライフステージごとの支出を把握しておけば、愛猫に健やかで幸せな時間を過ごしてもらえるでしょう。
経済的な備えは、飼い主の安心につながるだけでなく、猫にとって安定した暮らしを支える基盤となり、充実した猫生を実現するための重要な要素です。

この記事では、猫を飼う際にかかる費用を「初期費用」「月々の費用」「年間費用」「年齢別の変化」「生涯費用」の5つの視点から、具体的に解説します。


目次

  1. 初期費用:猫を迎えるために必要な準備
  2. 月々の飼育費:毎月かかる基本コスト
  3. 年間費用:1年でかかるコストの全体像
  4. 年齢別の費用変化:子猫・成猫・シニア猫
  5. 生涯費用:猫と16年間暮らすための予算
  6. まとめ:費用を知ることは、猫とのしあわせな暮らしの第一歩

初期費用:猫を迎えるために必要な準備

猫を飼い始める際には、まず「初期費用」がかかります。
これは、猫を迎えるための環境づくりや、健康管理のための準備費用です。

■初期費用の目安

  • 猫の入手費用:保護猫の場合は医療費(譲渡費)負担(1〜3万円)、ペットショップでは10万円以上も
  • 基本用品:トイレ、猫砂、食器、キャリー、ケージ、爪とぎ、キャットタワーなど(合計3万〜5万円)
  • 医療関連:ワクチン接種(5,000〜7,000円)、避妊・去勢手術(1.5万〜3万円)、マイクロチップ(3,000円前後)

合計:6万〜20万円程度が目安

月々の飼育費:毎月かかる基本コスト

猫との生活には、毎月のランニングコストが発生します。
これは、食費やトイレ用品などの日常的な消耗品費、医療費の積立などといった継続的な支出となります。

■月額費用の目安

  • フード代:3,000〜5,000円(プレミアムフードなら1万円近く)
  • 猫砂・トイレ用品:2,000〜3,000円
  • おもちゃ・消耗品:1,000〜2,000円
  • 医療費の積立:3,000〜5,000円(健康診断や突発的な病気に備えて)
  • ペット保険(任意):1,000〜3,000円(加入する場合は月額でこの程度が目安です。)

合計:月8,000〜15,000円程度が一般的

年間費用:1年でかかるコストの全体像

月々の食費やトイレ用品、医療費を積み上げると、年間で約11万〜17万円が目安となります。
これは「健康な成猫を標準的な環境で飼育した場合」の平均的な金額です。

■年間費用の内訳イメージ

  • 食費(キャットフード・おやつ):5万〜8万円
  • トイレ用品(猫砂・消耗品):1万〜2万円
  • 定期的な健康診断・医療費:2万〜4万円
  • その他(おもちゃ・ケア用品など):1万〜3万円

■追加費用の可能性

また、年間費用に加えて、状況によって発生する「臨時支出」も考慮しておく必要があります。

  • ワクチン接種:年1回、種類によって4,000円〜1万円程度
  • ノミ・ダニ予防薬:月1回投与で年間1〜2万円程度
  • ペットホテル代:旅行や出張時に利用する場合、1泊3,000〜5,000円前後(長期利用だとまとまった金額に)
  • 急な病気やケガ:診察・検査・治療費で数万円〜十数万円かかるケースもあり、特に高齢期は医療費が増える傾向あり

■計画のポイント

基本費用だけでなく、もしもの場合の追加費用も事前に見込んでおくことで、予期せぬ出費にも慌てず対応できます。

  • 基本費用(11万〜17万円)+追加費用(数万円〜)を見込んでおくと安心。
  • シニア期には医療費が増える可能性が高いため、年間20万円以上を想定しておくと余裕を持てます。
  • ペット保険の加入も、突発的な医療費に備える有効な手段です。

年齢別の費用変化:子猫・成猫・シニア猫

さらに、猫の年齢によっても必要なケアや費用は変化します。

子猫期(0〜1歳)

  • 食事量が多い:成長期のため高栄養のフードを必要とし、1日の食事回数も多め。フード代は成猫よりやや高くなる傾向。
  • 消耗品の頻繁な交換:トイレ砂やおもちゃの消耗が早く、環境を整えるための用品購入も増える。
  • 医療費リスク:体調を崩しやすく、下痢や風邪などで通院するケースも多い。

費用感:初年度は「初期費用+月々の費用」で、年間20万円以上になることも珍しくありません。

成猫期(2〜7歳)

  • 健康診断:年1回の定期検診で早期発見を目指す。予防接種やノミ・ダニ対策は継続的に必要。
  • 生活用品の更新:キャットタワーや爪とぎなど、耐久性のある用品を揃えておけば大きな出費は少ない。
  • 医療費は比較的少なめ:大きな病気のリスクは低いが、事故や誤飲など突発的な支出は想定しておくと安心。

費用感:安定しているが、臨時支出を含めると年間15〜20万円程度を見込むと安心。

シニア期(8歳〜)

  • 健康診断は年2回以上推奨:血液検査や画像診断など、詳細なチェックが必要。
  • 食事の変化:腎臓ケアフードや療法食など、特別なフードが必要になる場合があり、フード代が上がる。
  • 介護用品の導入:段差を減らすステップ、暖房器具、トイレのバリアフリー化など、生活環境の工夫に費用がかかる。

費用感:医療費が増えるため、年間20〜30万円を想定しておくと余裕を持てるでしょう。

生涯費用:猫と16年間暮らすための予算

猫を迎えるということは、単なる一時的な満足ではなく、十数年にわたる長い暮らしを共にする大きな決断です。

猫の平均寿命は約16年。
子猫期・成猫期・シニア期…こうしたライフステージごとの継続的かつ多岐にわたる支出を積み重ねていくと、飼い猫にかかる必要な生涯費用は、下記のようになります。

  • 生涯費用の目安:176万〜300万円
  • 内訳:初期費用+月々の費用×16年+医療費・臨時費用

まとめ:費用を知ることは、猫とのしあわせな暮らしの第一歩

猫を飼うということは、思った以上に長期的で継続的な経済的責任を伴います。
食事や医療費、シニア期のケアなど、ライフステージごとに必要となる支出は少しずつ変化し、積み重ねれば大きな金額になります。

しかし、事前に「どのくらいの費用が必要になるのか」を把握しておけば、安心して迎える準備ができ、突発的な出費にも慌てず対応できます。
これは飼い主にとっての安心だけでなく、猫にとっても安定した暮らしにつながります。

大切なのは「お金をかける=愛情」ではなく、必要なケアを無理なく続けられる環境づくりです。
計画的に備えることで、飼い主はお財布も心も余裕を持ち、猫には健やかでしあわせな猫生を送ってもらえます。

さらに、費用を知ることは「猫を迎える覚悟」を形にする第一歩でもあります。
経済的な準備が整っていれば、愛猫との日々の暮らしを安心して過ごすことができるでしょう。