猫は甘味を感じない!?──進化と習性が育んだ“選り好み”の理由
猫はグルメだと言われることがあります。
「好き嫌いが激しい」「食べるフードが限られている」など、飼い主を悩ませることもあるでしょう。
その背景には、猫の味覚のしくみと進化的な理由が深く関係しています。
🧪猫が感じ取れる味は3種類だけ?
人間の舌には約10,000個の「味蕾(みらい)」があり、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の5つの味を感じ取ることができます。
一方、猫の味蕾は約500個とされており、人間の20分の1以下。犬と比べても約4分の1しかありません。
このため、猫が感じ取れる味は「酸味」「苦味」「塩味」の3種類に限られているとされ、甘味や旨味にはほとんど反応しないのです。

🍬甘味を感じない理由──遺伝子レベルの違い
猫が甘味を感じないのは、甘味受容体「T1R2」が機能していないためです。
この受容体は糖分を検知するために必要ですが、猫はこの遺伝子の一部が欠損しており、甘味を感じる構造そのものが存在しないことが分かっています。
これは、猫が完全な肉食動物であり、糖分を摂取する必要がないため、進化の過程で甘味受容体が退化したと考えられています。

🧂塩味は鈍感、でも好む傾向も
猫は塩味を感じることはできますが、感度は非常に低いとされています。
そのため、塩分が多くても気づかずに食べてしまうことがあり、腎臓や心臓への負担になる可能性があるため注意が必要です。
一昔前のキャットフードには、食いつきを良くするために高塩分のものもありましたが、現在では健康面から見直されています。
🍋酸味に敏感な理由──腐敗のサインを見抜く本能
猫は酸味に対して非常に敏感です。
これは、腐敗した食べ物に含まれる酸味成分(乳酸・リン酸など)を避けるための防衛本能と考えられています。
猫は単独行動をする動物で、一度に多くの獲物を捕まえることができません。
そのため、捕まえた獲物はすぐに食べる必要があり、腐敗したものを食べてしまうと命に関わるため、酸味に対して強い拒絶反応を示すようになったのです。
ただし、酸味の中でも「爽快なクエン酸」などは好む猫もいるという報告もあり、酸味の種類によって嗜好性が分かれる可能性も指摘されています。

☠️苦味は“毒”のサイン──拒絶反応が強い
苦味は自然界では「毒」のサインとされることが多く、猫も苦味に対して非常に敏感です。
苦味を感じるとすぐに吐き出す、食べないなどの行動をとることが多く、これは生存戦略としての味覚の進化といえます。
猫は肉食動物であるため、植物由来の毒にさらされる機会は少ないものの、腐敗した肉や異物を避けるためのセンサーとして苦味受容体が発達していると考えられています。
🐶犬との違い──狩りのスタイルが味覚を分けた
犬は猫と違い、群れで狩りをする動物です。
多くの獲物を得た場合は、土に埋めて保存する習性があり、多少腐敗した肉でも食べられると判断する傾向があります。
そのため、犬は酸味に対して猫ほど敏感ではなく、ある程度の酸味なら受け入れることができるのです。
また、犬は甘味受容体を持っており、果物やアミノ酸の甘味に強く反応することが知られています。
これは、犬が雑食性であることと関係しており、糖分をエネルギー源として利用するため、甘味を感じる能力が進化したと考えられます。

🧬味覚は“生きるためのセンサー”
猫の味覚は、人間のように「楽しむための味覚」ではなく、生きるための判断材料として発達してきました。
- 腐敗を避けるための酸味センサー
- 毒を避けるための苦味センサー
- 必要なミネラルを摂取するための塩味センサー
このように、猫の味覚は**生存に直結する“命のセンサー”**として機能しているのです。
🐾猫の嗜好性は味覚だけじゃない
猫が食べ物を選ぶ基準は、味覚だけではありません。
匂い・食感・温度・水分量・見た目など、複数の要素が絡み合って「食べる・食べない」が決まります。
特に匂いの影響は大きく、味よりも匂いで食べ物を判断する傾向があるため、フード選びでは香りの強さも重要なポイントになります。
また、猫は水の味にも敏感で、水道水よりも湧き水や流れる水を好む傾向があることも報告されています。

📝まとめ
- 猫の味蕾は約500個と少なく、感じ取れる味は「酸味」「苦味」「塩味」の3種類
- 甘味受容体が遺伝的に欠損しており、甘味は感じない
- 酸味と苦味には敏感で、腐敗や毒を避けるための本能的反応
- 犬は甘味を感じ、酸味にも寛容。狩りのスタイルの違いが味覚に影響
- 猫の味覚は“生きるためのセンサー”であり、嗜好性は匂いや食感にも左右される
※これはあくまで味覚の進化的背景に関する話です。
腐敗した食べ物は健康に害を及ぼすため、犬にも猫にも与えないようにしましょう。


