地域によって猫のしっぽに違いがある!?──「カギしっぽ」と「ストレートしっぽ」の不思議な分布
猫のしっぽには、まっすぐ伸びた「ストレートしっぽ」もあれば、途中で折れ曲がったような「カギしっぽ」もあります。
このしっぽの形、実は日本国内でも地域によって分布に違いがあることがわかっているのです。
「カギしっぽ」は関東に多く、「ストレートしっぽ」は関西に多い──。
そんな興味深い傾向が、京都大学の野澤謙名誉教授による全国6万7千匹の野良猫調査によって明らかになりました。
📊地域別のカギしっぽ率
- 東京(23区):約40%
- 埼玉県:約51%
- 神奈川県:約45%
→関東では、約半数近くの猫がカギしっぽを持っていることになります。
一方で関西では…
- 大阪府:約27%
- 京都府:約18%
- 奈良県:約18%
→関西では、カギしっぽの猫は少数派となっています。
このように、しっぽの形に地域差があるというのは、猫好きにとっては驚きの事実かもしれません。

🐱カギしっぽってどんな形?
「カギしっぽ」とは、しっぽの先端が曲がっていたり、途中で折れたように見えるしっぽのこと。
見た目はアルファベットの「C」や「L」のような形だったり、くるんと丸まっていたりと、バリエーションが豊富です。
この形は、遺伝的な要因によって生まれるとされており、レントゲンを撮ると「半椎骨(はんついこつ)」と呼ばれる特殊な骨が見られることがあります。

🧬なぜ地域差が生まれたのか?──2つの有力説
①「猫又伝説」説
江戸時代には、「尻尾の長い猫は年を取ると二股に分かれ、化け猫“猫又”になる」という伝説が広く信じられていました。
このため、尻尾が長くまっすぐな猫は忌避され、短く曲がったしっぽの猫が好まれたとされています。
江戸(現在の東京)を中心とした関東では、この伝承が強く根付いていたため、カギしっぽの猫が多く残ったのではないかという説です。
②「中国からの輸入」説
一方、関西では古代に都が置かれていた京都を中心に、中国から唐猫が多く輸入された歴史があります。
中国では、尻尾がまっすぐな猫は「ネズミをよく捕まえる」とされて重宝されており、ストレートしっぽの猫が好まれていたのです。
その唐猫の血を引く猫が多く残った関西では、現在でもストレートしっぽの猫が多いという説です。
🐾長崎にも多い「尾曲がり猫」
実は、関東以外にも「カギしっぽ猫」が多く見られる地域があります。
それが長崎県です。
野澤教授の調査によると、長崎県では**約80%の猫が尾曲がり猫(カギしっぽ)**だったという結果も出ています。
これは、長崎が古くから海外との交流が盛んだった港町であり、東南アジア由来の猫が多く入ってきたことが影響している可能性があります。
東南アジアでは、カギしっぽの猫が「幸運を引っかけてくる」とされ、縁起の良い猫として親しまれてきました。

🐈カギしっぽは“福を呼ぶ”しっぽ?
日本でも、カギしっぽの猫は「福を尻尾で引っかけてくる」「幸せの扉を開ける鍵」といった縁起の良い象徴として語られることがあります。
ヨーロッパでも、カギしっぽの猫は「幸運を運ぶ猫」として人気があり、特にオランダやベルギーでは幸せの象徴とされているそうです。
🧠しっぽの役割と個性
猫のしっぽは、歩行時のバランスを取ったり、気持ちを表現したりする大切な器官です。
ストレートしっぽの猫は、しっぽをピンと立てて「うれしい」「安心している」などの感情を伝えやすいですが、カギしっぽの猫はしっぽの動きが制限されるため、表現が少し控えめになることもあります。
とはいえ、カギしっぽの猫にも独自の魅力があり、しっぽの形が個性のひとつとして愛されているのです。
🐾まとめ:しっぽの形に込められた物語
- 猫のしっぽには「ストレート」と「カギしっぽ」があり、地域によって分布に差がある
- 関東ではカギしっぽが多く、関西ではストレートしっぽが多い
- その背景には「猫又伝説」や「中国からの猫の輸入」などの文化的・歴史的要因がある
- 長崎では尾曲がり猫が多く、東南アジア由来の猫との関係が示唆されている
- カギしっぽは「福を呼ぶしっぽ」として、国内外で縁起の良い存在とされている

どんなしっぽの猫ちゃんも、かわいさに違いはありません。
しっぽの形に込められた歴史や文化を知ることで、猫との暮らしがもっと深く、豊かになるかもしれませんね。


